ふるえて眠れ
6
目を開けると、そこにアメリアの顔があった。
うつらうつらと舟を漕ぐその顔をまじまじと見る。
頭の後ろにあるのは・・・
慌てて身を起こす。
いつの間に自分は眠ってしまったのか。
木漏れ日の指す木の下で。
膝・・
未だ目覚めないアメリアを呆然と見ていると・・
突然ビクッと身を震わせた。
目を開き膝を見つめ泣きそうな顔できょろきょろと首を振る。
俺の姿を認めると
「いたぁ・・・・・」
満面の笑みで言う。
なぜここにいる?だとか、
セイルーンに帰ったんじゃ?とか、
浮かんだ疑問を忘れ目を奪われる。
しかし見る間にその目に涙をため俯く。
「なんで、だまっていっちゃったんですか?」
「ちゃんと笑ってお別れしなきゃって。
旅の無事をお祈りしようって。
がんばってそうしようって思ってたのに。
置いてかれちゃって。」
アメリアの口から出る別れと言う言葉に思わず身が竦む。
身勝手なもんだ。
「だから、見つけたら正義の鉄ついを!って思ってたんですけど。」
俯いたまま拳が握られる。
「・・・すまん。」
いたたまれなくなって詫びが口をつく。
何を今さら。だが。
「でも、さっきの顔見たらどうでも良くなっちゃいました。」
「あんな顔して、1人で泣かないで下さい。」
俺は笑っていたはずだった。
けれど。
ずっと泣いていたような気もする。
「あと少しだけですけど、旅を続けられます。
その間・・・ついていっていいですか?」
「なぜだ・・・?」
心にもない問いを投げると、
ついと近寄り、俺の法衣に身を埋める。
「迷惑かも知れませんけど、鬱陶しいかも知れませんけど、
あんな顔するくらいなら・・・
というかですね・・・?
私も多分あんな顔してたんです。
だから・・・。」
アメリアの背に手をまわす。
「すまん・・・。」
そっと抱きしめ言った言葉はまたもや詫びで、
今の俺にはこんな言葉しか発せない。
けれど、
「しかしお前、ずいぶんと積極的になったもんだな。」
ばっと顔を上げ真っ赤な顔で跳び退る。
「な・・な・・な・・・」
指を指した手がウロウロと彷徨う。
「・・・いくぞ。」
せめて時間の許す限り。
今だけは。
隣に立つこの笑顔を見ていたいと思う。
「はいっ!」
隣でこの声を聞きたいと思う。
「しかしお前なんだってここにいるんだ?」
偶然にしては出来過ぎだ。
まさか正義の力とか言わないだろうな・・・
「まだまだ甘いですね!ゼルガディスさん!
リナさんから物をもらってただですむと思っちゃダメですよ!」
ニカッと笑ったアメリアが俺の胸を指差す。
懐の短剣。
「そうか・・・やっぱり呪いをかけてやがったか・・・」
肩を落として呟く。
「私呪いですか・・・。ひどいですよ、それ!」
傍らでくるくると笑うアメリアを見て、
俺はあの日受けとった餞別と
おせっかいな仲間に、心から感謝した。